2004年04月05日

採血の時

ゴム臭の強いゴム管で縛られた、私の筋肉質な左腕の血管は、どこかで見た標本のようにむくむくと浮いて出た。私は、丸くて小さい看護婦のなすがままになって、その作業を見つめていた。看護婦の、湿った冷たい手に手首を押さえられて、肘の内側がアルコール綿で清拭された。看護婦は、ナンバリングの施された短い試験管?と太い針をガチャガチャと用意した。採血は、普通の注射器を刺して行うという、私のおぼろげな記憶は裏切られたのだ。
看護婦の、子供をあやすような「ちょっとチクッとしますよお」という合図に似合わない、尖った筒のような針を盛り上がった血管に差し込まれた。針以外の部材など細かく記憶にないが、私の腕に刺されたものは、液体の入るべき容器の無い、まさしく筒であった刺された針は途中で途切れていて、切り口はやはり尖っていた。そこから血が出ないのは、看護婦の親指が直前の血流を止めていたからなのだろうか。
次に看護婦は、私の意表を突いて、傍らにあった小さな「試験管」のような空の容器を片手に持っていた。ゴムの蓋で密閉された、小さめの丸底試験管!?
看護婦は、蓋のある口の方をやや下向きにそれを持ち、私の腕に差し込まれている針の切っ先に「プスリ!」ゴムの蓋を突き抜けて、先の尖った筒が、試験管のほぼ真ん中まで差し込まれたのだ。同時に血が、滑らかな塩ビ系の棒のように飛び出した。試験管の丸底はたちまち汚され、針の突き出た蓋の方から血の嵩がジワリジワリと増していった。
これが採血とは!私の腕から、太い針を通って、血がびゅうびゅう飛び出していた。膝を擦り剥いても、指先を切っても、喧嘩で鼻血を出しても、血はいつもゆっくり出るのに。
私は、しばらく恍惚として、嵩を増す自身の血液に見入っていた。看護婦が、「もう一本いきますね」と言って、容量の7割ほどまで採血された、一本目の試験管を抜いた時、私は自身の股間の、猛々しい膨張に気がついた。小便を溜めていたのでもなく、小太りの看護婦に欲情したのでもない。私は動揺した、人間の不思議さに!私の滑稽さに!
何も知らない看護婦は、直前の一本目と寸分違わぬ要領で二本目の採血を始めた。飛び出す血の勢いは、一本目よりもやや弱かったけれども、充血する私の股間は、私の自覚という相乗効果もあってか、更に硬く、熱くなっていたのだ。

Posted by chitoku at 00:25 | コメント (0) | トラックバック