2002年00月00日

蒲団を持ち上げる話

一切の心霊現象を信用しない私は、俗に言う「金縛り」も、睡眠中の一時的な部分的覚醒に過ぎないと考えている。よって、私の体験談は、極めて現実的で肉体的なものである。
私はある一時期、身体的にもっとも溌剌としていた18・19歳の頃、頻繁に「金縛り」を体験していた。否、それを弄んでいたのである。
一番最初の記憶は、残念ながら定かではない。何時ごろ、どのような場所であったか思い出せないのは、恐らく一般的に言われるように、睡眠中の出来事だったからだろう。ただし、息もできないほど恐ろしく、半死半生の態で我に返り、しばらく怖くて眠ることができなかったのは覚えている。
はじめて金縛りを「弄ぶ」ようになったのは、恐らく4回目、今夜は来そうだと心構えをしていた晩からだと思う。
来るぞ来るぞ、と考えているとなかなか眠れないもので、その夜も蒲団に入ったまま何時間か経過していただろう。それでも意識はやがて薄れて朦朧としてきた頃、足元から弱い電流のような感覚が、一瞬に身体を通って頭のてっぺんまで抜けていった。
「来た!」
続けざまに、2回、3回と金縛りの予兆が、早さを増しながら通り抜けた。5回目の時、それは通り抜けずに頭のてっぺんで止まった。体中が弱い電流で満たされているような感覚。指一本動かすことが出来ない。私は、金縛りの過程を自覚し得たことに満足していた。動かそうとしても動かない身体に納得していた。
やがて、全身の痺れは和らぎ、動かすともなく寝返りを打ち、横向きになった。金縛りの最中が騒々しかったのかと錯覚するほど、寝床の静けさが不気味に感じられた。改めて仰向けになると、再びあの電流が通り抜けた。
「また来る!」
とっさに横向きになると、それきり金縛りの予兆はやって来なかった。「仰向けに寝るとまた来る」と期待した時、私は<安全な恐怖>の虜になっていた。どこまで我慢出来るのか、どれだけ長く続くものなのか、どのくらいの力なら撥ね返すことが出来るのか、まもなく訪れる金縛りに、私はすっかり興奮していた。
いざ仰向けになると、期待通り、金縛りはやって来た。
足元から頭のてっぺんへ、ひゅううん!おお、来たぞ来たぞ、来てみろ金縛り!
足元から頭のてっぺんへ、ひゅううん!まだまだ!待ってるぞ待ってるぞ。
足元から頭のてっぺんへ、ひゅううん!よし、その調子だ。来い、来い!
足元から頭のてっぺんへ、ひゅううん!ああ、そろそろか、そろそろか。
足元から頭のてっぺんへ、ひゅうビシイ!よおし、止まった!これだ、これだあ!
そうして私は、故意に呼び込んだ金縛りに身体を委ねた。表情も変えられない金縛りの最中だが、動かない身体のそれぞれの部分を、実にリアルに感じることが出来た。私は、そのまましばらく、金縛りの快楽に浸っていた。
ところで、これはとても意味深なことだが、その時私の肉茎は極度に充血し、こんもりと蒲団を持ち上げていたのである。

Posted by chitoku at 00:00 | コメント (0) | トラックバック