−遅めの通勤電車−
私の正面に座った大柄で汗だくの男性は、私と目が合ってもそらそうとしなかった。
正面の座席は7人びっしり座っていたが、その男性だけ浅く腰掛けて、浮いているようだった。
7人のうち一番最後に座ったからだ。
−光る男−
汗に光る、四角い顔の細い目が、正面の私をじっと見ていた。
髪は短いが、黒々と光っている。
地味な色だが、光る生地のスーツ、不似合いな茶色の靴も光っている。
−張りのある体−
その男性は、肉付きが良く、肩幅が広い。
太腿もズボンがはちきれそうなほど太く、膝に乗せた鞄もヤケに大きい。
金色のごつい腕時計と、めり込んだ指輪が中年くさい。
−無言の会話−
両隣の乗客は目を閉じていたが、その男性は、まだ私を睨んでいた。
「好きで座ってるんじゃねえ」と言っているようだった。
私は思いがけず「お前も頑張れよ」と、目で語り返していた。