自分の名前で話す女性、「私は」など代名詞でなく、「サチコはね」とか「ミエがさあ」と話す女性、たいてい若いからというのもあるが、その会話は可愛い。
反対に、男性のそれは、聞いたことが無い。もちろん、可愛くはないだろうし、想像したくもない。
ところで、少し拡大・脱線して、「一般名称」に代えて「商品名」を用いた会話で、私が思わず「可愛い」と感じた男がいた。
私は、商用で男と待ち合わせ、新幹線で出張に出る手筈であった。男は定刻通りに着き、感じの良い社交的な挨拶を済ませてから、私と供に改札へ向かった。男は、改札の前で急に立ち止まると、私に向き直って言った。
「すいません、マールボロ買ってきます。途中にマールボロ買える自販機なくて。すぐ戻りますから。」
煙草と言うのが普通だと思うが、わざわざ商品名を用いたのであった。私より少し年上の筈だが、とても微笑ましく、頬が緩んだ。
さらには、「マルボロ」でなく「マールボロ」であったことも、一層私に「可愛い」と感じさせたのであった。