いつか私は、知らない場所を歩くのだった。
目にするのは、全く記憶に無いものばかりだ。
今も、まるで見たことの無い、深くて暗い、公園の噴水くらいの大きさの、眠ったような窪地の前で立ち往生している。
そこで、迂回しても、飛び込んでも、あるいは立ち小便とか、埋め立てとか、一切は自由なのだった。
辺りに散らばって私を見ている、ぼんやりした人たち。
見たことのない周囲の建物。
見たことのない電柱。
全く記憶にない看板や鳥や空までも、私を見ているだろうか。
考えあぐねて私は、後ろにいる、おじいちゃんの上半身に聞いた。
この窪地に呼び名はありますか。
こまごもりだよ。
ふうん。
私はおじいちゃんを踏み台にして、くもり空に向かって、高々と舞い上がる。
離れて見るこまごもりは、暖かくてやわらかいのだ。
人々や建物たちは、一様に肩を震わせていた。
こらえながら笑っているのだった。
こまごもりは、恥ずかしがるように広がり、ネオンライトのように色をいくつも変えながら、こんもりと盛りあがるのだった。
私は、盛りあがるこまごもりに向かって落下する。
ところが、こまごもりも同じ速さで落下しているらしく、私はいつまでたっても、受け入れられないのだった。
こまごもりを知っているのに。